forum_4|JIDA東日本ブロック                     

連続フォーラム「生活の論理を考える」

◎第4回フォーラム・見学編「独立行政法人 製品評価技術基盤機構」


・日時:2008年12月10日 PM2:00〜4:15
・場所:東京都渋谷区西原(京王新線幡ヶ谷駅徒歩10分)
・参加:21名(見学の都合により限定)
・主催:JIDA東日本ブロック運営会ビジョン担当


この連続フォーラムは最近よく言われる「ユーザー視点に立ったデザイン」を一歩踏み込んで捉える
ために「生活」について考え続けていますが、平行して「見学編」を設け、関連する様々な組織・施
設の中からデザインに関係の深い所を選び見学しています。
前回の内閣府所管の独立行政法人 国民生活センターに続き、今回は経済産業省所管の独立行政法人-
製品評価技術基盤機構NITE(National Institute of Technology and Evaluation):
ナイトを見学しました。



●ナイトの目的ナイトは経済産業省所掌の消費生活用製品を対象に製品の事故情報を収集し、調査・
分析後、結果を行政に提供し、また広く公表を行って製品の安全対策の充実と事故の未然・再発防止
に役立てています。必要に応じ原因究明のためテストを実施し、学識経験者等による委員会で事故原
因や事業者の再発防止措置の審議・評価を経て、定期的にホームページで公表しています。

●沿革
昭和3年設立の輸出絹織物検査所は、戦後の23年に輸出毛織物検査所とともに繊維製品検査所になり、
他方、同年には機械器具検査所、日用品検査所、試薬検査所が設立され、その後27年に工業品検査所
に統合、59年には先の繊維系と合併して通商産業検査所になり、平成7年に製品評価技術センターに
改組、13年に現在の独立行政法人 製品評価技術基盤機構となりました。わが国製品検査機関の中心
的役割を果たして来たことが分かります。

●組織
現在は「バイオテクノロジー分野」「化学物質管理分野」「適合性認定分野」「生活安全分野」の4分
野に纏められています。テストや研究は全国各地で行われており、本所は東京、バイオテクノロジー
本部は木更津、生活・福祉技術センターは大阪、生活・福祉センター 標準化センターはつくばにあり、
札幌、仙台、桐生、名古屋、金沢、広島、高松、福岡に支所があります。総員400名、年間予算は80
億円とのことです。

●生活安全分野
今回は、IDに直接関係する生活安全分野を見学しました。同分野は製品安全・事故情報の収集・調査
と結果の公表の他、市場モニタリングテストの結果の公表、高齢者や身体障害者の安心安全をめざし
て国内標準や国際標準を推進する活動を行っています。尚、一般の人間特性計測データ量は国内最大
のものです。





ー予定された見学内容は次のようなものでした。ー

1.ナイト概要紹介ビデオ(10分)/製品事故再現ビデオ(10分)
2.製品事故関係展示説明(30分):生活・福祉技術センター 菅沼恵一調査官
3.標準化関係展示説明(30分):同上、標準化センター 蛯谷勝司主任
4.人間特性データベース(HP)·紹介(10分)
5.質疑応答(30分)

1.【製品事故再現ビデオ−−信じられないことが生活の中で実際に起きている 】
蓋が飛ぶ圧力鍋。二重構造の鍋の破裂。電源コード、電源プラグ、束ねたコード、デスクに挟まった
コード、テレビなどの出火。自転車カバーを入れた洗濯機の転倒、センサーつき防犯ライトが風で布
団と接触しての出火、スプレー缶の爆発、小学校の給食用ガラス食器の破片の飛散(陶磁器性との比
較)、電子レンジに入れた湯たんぽの加熱時間超過による破裂、天然植物油塗料の自然発火など。

2.【 製品事故関係展示説明−−原因究明の終わった生々しい製品の実物展示 】
・ガス給湯器:修理業者の不正改造後も使い続けてCO中毒が多発。
・樹脂製サンダル:最近、子供がエスカレータで挟まれ実際の場所でテスト。改良へ。
・食器洗い乾燥機:漏水して乾燥ファンのモーターでショートし出火。回収。改善へ。
・油性塗料:ボタ山と同様に酸化熱で自然発火。パッケージ改善へ。
・殺虫スプレー:可燃性ガスの気化熱で殺虫するもの。引火して火を吹く。回収へ。
・樹脂製湯たんぽ:電子レンジで加熱して使うもの。指示の6分をオーバーして破裂。
・二重鍋:カシメで接合された空気層に水が入り蒸気となり破裂。ロウ付けで改善へ。
・デスクマット:抗菌加工に問題があり1000件もの皮膚障害。回収へ。
・扇風機:30年以上使用。コンデンサーが劣化して加熱出火。当時の樹脂は燃え易い。
・テレビ:ブラウン管を映すための高圧発生の回路は10年で経年劣化。
・石油温風器:ゴムホースの劣化。回収中。
・電気コンロ:狭い空間で接触によりスイッチが簡単に回ってしまうことによる火災。
・ガードをつける、2アクションにする等で改善中。 *最近の新聞記事をご参照下さい。



3.【 標準化関係機器の展示−−意図はまさしく「デザイナーに使って欲しい」とのこと】
JISやISOの標準化をやっている。
高齢者や障害者に役立つ福祉系のデータベース作り。人間特性をいかにデータ化するか。
肩、腕、指などの身体寸法。体力測定。筋力データは製品設計にすぐ役立つはず。
関節の自動可動率など。ちなみに関節の可動率は年齢より日頃の生活習慣と関わるのこと。
データを具体的に活用した例として、消火器の設計で高齢者の握力データからみて軽減し容易に
噴出可能にしたケースが紹介された。
データは20歳代〜85歳の1000名。元気のありすぎる特定の人たちではなく普通の人々が被験者
になっているとのことです。
尚、データはホームページですぐ引き出せるとのことで、下記のアドレスをご参照下さい。

4.【 展示してある機器などによる説明 】
機器の被験者は20代から。
握力、垂直飛び。
全身反応時間は光ったらジャンプするが高齢になると反応が鈍い。
よく見かける高齢者体験と妊産婦体験器具。
いろんな形状のドアノブをお年寄り体験用手袋で。視力低下体験用の眼鏡も。
点字ブロックの多様なパターンと色のサンプル。どの色が見易いか。今後JISになる。
実際に多くの視覚障害者に来て貰ってテストした。
社会には若干見える人が多く、色を頼りに歩いているとのこと。
ドイツ、アメリカ、スペインの実物もあるがバラバラ。日本製を世界標準にと提案中。
人間工学の研究室でよく見かける、押す、引く、握る、ひねる等様々な動作が計測可能の
装置がおいてあり、活用されているとのこと。
耳の特性測定器。ISOがあるが殆ど欧米人の基準であり、国際化時代におかしいと。
当方にデータがあれば今後修正も可能とのこと。
炊飯器、洗濯機の報知音は2000ヘルツ。
高齢者に配慮した報知音や掃除機などの妨害音を受けた時の報知音も。JISへ。
何ヘルツまで聴こえるか実際に鳴らして皆で聴いてみる。
女子高校生は「着メロ」で16000ヘルツまで可能とか。成果を規格に落とし込む予定。
また「つえ先ゴム」の研究成果や、画面に凹凸加工の絵本、音声発生の電卓などユニバーサル
デザイン関連の展示もあった。



5.【 質疑応答 】
菅沼、蛯谷両氏と情報統括の奥野氏を交え質疑応答を行った。質問の概要は次の通り。
・国民生活センターとの違いは。
・経年劣化とモノの耐用年数の関係は。
・耐用年数の基準の出し方は。
・各々のメーカーが適当に決めていいものか。
・家電事故。各メーカーの評価項目をクリアしているはずだが。再現はナイトで独自か。
・樹脂製のサンダルが挟まれた。エスカレータでの状況どこまで。
・昨日のテレビで放映された、オイルでシャツが発火した件。
・対象となる道具は。危険を伴うものとか、自動車とか色々あるが。
・産業用機械は。
・人体特性データ。テーマはどのように決定か。海外については。
・指まわりの巧緻性は。
・一般のユーザーの見学は。
・消費者団体の人々の見学は。
・年間予算、人員は。
・デザイナーはユーザーの代弁者でもあるが、何かご希望は。
・筋力測定はいいが筋力だけだとやや曖昧。歩いてつまずくとか、安全の標準化をやれば
もっと有効では。なるべく早めに。
・大学等との共同研究は。
・嗅覚の研究は。
・メーカーとの交流は。
・カラーユニバーサルデザインの研究は。

今回はJIDAの見学のために特別メニューを組んで頂いた。製品設計時の与件と配慮、製造時、
販売時、使用時、経年劣化の問題など、見聞した多くはデザインと深く関わるものであり、
見学の成果を今後に生かしたい。                              
最後に、実現に向けご丁寧に対応して頂いた奥野陽主査と、前回に続きサポート頂いた東日本
ブロック情報委員会 佐野正氏に改めて感謝したい。

(レポート:東日本ブロック運営会ビジョン担当 佐野邦雄)


尚、アドレスは下記の通りです。ご活用下さい。
・NITEホームページ http://www.nite.go.jp/
・事故情報データベース http://www.jiko.nite.go.jp/

収集した製品事故情報や事故に関する特記ニュースなどの各種情報。
・技術基盤情報データベース http://www.tech.nite.go.jp/

破壊データベース・生体障害データベース、発火燃焼データベース、
標準基盤研究など実施してきた各種の成果を提供。
・人間特性データベース http://www.tech.nite.go.jp/human/

人間の基本的な特性である身体寸法、体力値、関節特性、発揮力などのデータを公開。
また、高齢社会にむけての高齢者対応基盤整備データベースを公開。

更新日:2012.01.06 (金) 10:19 - (JST)