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連続フォーラム「生活の論理を考える」

◎第2回フォーラム・見学編「独立行政法人 国民生活センター相模原事務所」


・日時:2008年9月26日PM2:00~4:00
・場所:相模原市弥栄(JR横浜線淵野辺下車徒歩20分)
・参加:20名(見学の都合により限定)
・主催:JIDA東日本ブロック運営会ビジョン担当



この連続フォーラムは最近よく言われる「ユーザー視点に立ったデザイン」を一歩踏み込んで捉える
ために「生活」について考えていますが、平行して「見学編」を設け、関連する様々な組織・施設の
中からデザインに関係の深い所を選び見学を計画しています。

今回は来春に予定されている消費者庁の設立を前に注目を浴びている国民生活センター相模原事務所
を見学しました。同センターがチェックする「安全」は国内最高のもので、安全は生活の中のモノ作
りに関わるデザインの基本的なテーマでもあり実体に触れる機会としました。


■国民生活センターの目的
国民生活の安定および質向上に寄与するため、総合的見地から国民生活に関する情報の提供および調
査研究を行う。昭和45年発足、平成14年から内閣府の独立行政法人に。
消費生活相談をはじめとした種々の情報を全国の消費生活センターなどから収集し、消費者被害の未
然防止・拡大防止のために分析・提供している。また、消費生活相談や商品テスト、教育研修、生活
に関する調査研究を実施し、消費者が安心して生活が送れるよう、その結果を様々なメディアを通じ
て情報提供し消費者支援に努めている。
また、中央省庁に対し基準などの改正を要望、業界団体へ製品などの改善要望を行っている。
(パンフレットによる)。


■主な業務
最初に、説明とビデオにより紹介された主な組織は以下の通り。
東京事務所(品川)と相模原事務所が中核で全国に500の消費生活センターがある。

1:情報業務
元になる情報の収集。PIONETシステムで全国とセンターが結ばれている。年間100万件、累積
1,000万件の情報がある。情報は社会共有の財産と考えている。

2:危害情報室(平成19年設置)
全国の消費生活センターあるいは病院から寄せられた情報を調査・分析する。

3:相談業務
テレビなどでよく紹介される相談部。アドバイザー多数。また経由相談の中から時には全面的に
引き受けることもある。技術者参加のケースも。制度として「ADR業務」があり、裁判まで行か
ずに当事者同士が話し合い簡便に解決する。

4:商品テスト業務
プロダクトデザインと最も関係の深いところ。自動車の例:原因究明、耐久性、事故再現、走行
再現、ブレーキ、制動安定など。他に騒音、電磁波、家庭内の設備関係など多数。

5:調査研究                             
少子高齢社会の問題など生活全般を対象に。

6:教育研修
地方公共団体の消費者行政担当職員や消費生活相談員、消費生活相談員をめざす人、企業の消費
部門担当者、教員などを対象に消費者問題に関する知識や技法を習得するための研修講座を実施。
また「消費生活専門相談員」の資格を認定している。情報資料館があり生活に関する図書・資料・
統計などを体系的に収集整理している。図書5万冊、内外雑誌500種あり。ホームページで検索可。

7:広報・出版
記者発表、出版物(月刊国民生活、くらしの豆知識、国民生活研究、消費生活年報)、
啓発用リーフレット。
TV番組「安心!くらし情報〜あなたのたしかな目」。
ホームページ: http://www.kokusen.go.jp/


■見学
所員の案内で商品テスト部門を中心に見学した。ただしテスト中や非公開のテスト室も多数あり、
かなり限定された見学となった。センター所員は130名。内、テスト部は22名。
各テスト室と廊下の展示パネルを含めて概要以下の通り。

・温暖環境室/・食品テスト:中食のフライ、高麗人参を主原料にした健康食品/
・ヘナ配合の白髪染めの皮膚トラブル/・使用者テスト室=モニターによる/
・衣生活テスト室/・キッチン用品テスト室/・官能テストコーナー=実際に食べてみて/
・電子レンジ=卵の爆発/・簡易カイロ/・テスト技術研修室/・こんにゃく入りゼリーテスト結果/
・ベビーカーの安全性テスト結果/
・社会に衝撃を与えたシュレッダーのテスト商品実物と試験用のロボット(*ホームページにあり)
・難燃性テスト室=パジャマが燃えるか検証/・爆発=スプレー缶・ペットボトルなどの確認/
・電気機器テスト室=繰り返し試験用ロボット/・子供が挟まれたベッド/
・住宅設備テスト室=椅子の荷重テストなど/・電波音響機器テスト=テレビ、ビデオなど/
・視聴テスト室/・家庭内事故解析棟=風呂・トイレなど高齢者の問題/
・車の走行条件を変えたテストコースなど。


■質疑応答
商品テスト部の片岡茂調査役が担当され、参加者から要旨下記のような質問が出た。
<事故が起きた現場へ出向くことの有無?>
<PL法が実施されて裁判の判断に使う資料の提供は?>
<シュレッダーでこういうテストをしたと。そのテスト内容はその後どこまで効力があるか?>
<このセンターで扱う商品の安全安心は、事故が起きてから扱うのだから後追いなってしまうの
ではないか。起きる前にテストできないものか?>
<例えば中小企業で開発途中の段階なら非常に有効だと思うが?>
・危険情報が入った時点で動けないか?
・研究員以外の専門家の力を借りることは?
・アドバイスを受けることがあるとのことだが、調査員の資格は?
・基準の設定について。JISや、あるいはそれ以上の基準を用いてもの作りをやっているが、
こちらの基準はどのように設けているか?
<ものによると思うがテストはどの位の時間を掛けるか?>
・最近、経年劣化の商品の問題がでているがどのように対応するのか?
・自動車のテストコースの稼働率は?
<商品の形に起因する問題はあるか?>
<この際デザイナーへの注文があったら伺いたい。>

片岡氏はすべての質問に具体的に答えられたが、このセンターはあくまで「消費者保護が主眼で
ある」こと、テストした情報は提供するが企業に直接直せという権限はなく、その先は関係省庁の
指導に委ねることなどを説明された。

デザイナーへの期待としては、「厄介な取扱い説明書によらなくても次の操作が分かるように
工夫したデザインを」
と期待を述べられた。

見学中に、ユーザーによる想定外の使い方や、消費者教育の必要性も参加者の間で話されたが、
それらも含めて今後の検討課題としたい。

■レポート:佐野邦雄



更新日:2012.01.06 (金) 10:11 - (JST)